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 2 はじめての2ちゃんねる

 さて、そうは言っても、ちょっと怖かったのも事実です。
 その頃、2ちゃんねるというのは、アングラサイト扱いで、スピノザも、なんだか一般の人間が行くところではないような気がしていたからです。(今は、2ちゃんねるユーザーが、2000万人とか3000万人とかいいますから、アングラサイト扱いは出来ないでしょう)。
 でも、勇気を奮って行ってみました。
 別にパソコンにウィルスがつく、なんて事件は起こりませんでした。ごく普通の掲示板と同じです。ただ、違うのは掲示板の異様な多さでした。
 試行錯誤を繰り返し、スピノザは、ハングル板と呼ばれる、韓国、北朝鮮、在日韓国人、在日朝鮮人問題を専門に扱っている板にたどり着きました。
(2ちゃんねるは、スレッド、と呼ばれる小さな掲示板で構成されています。一つ一つのスレッドが、小さなテーマに対応しています。例えば、「ハングル板の本棚」と呼ばれるスレッドは、ハングル板に関係がありそうな本の紹介だけが書き込まれます。そうして、その数百にもなるスレッドの群れが、大テーマで統括され、板と呼ばれます。板は、いた、と読みます。この板が、また数百以上あるのです。中には、パン板だの、ダム板だのという、コアな板まであります)。
 さて、ハングル板に行って、スピノザは驚きました。
 ハングル板にある数百のスレッドの九割以上が、嫌韓国、嫌北朝鮮、嫌在日としか読みようのないタイトルを持っていたからです。
 ああ、やっぱり、ここは差別板なんだ。最初はそう思いました。
 事実、他の板のスレッドを見ると、韓国や在日に批判的な書き込みがあるやいなや、すかさず、
「差別主義者は、ハングル板に帰れ!」
 というレスがついたものです。
 でも、やはりおかしい。
 普通、自分が興味を持って勉強したことには、自然に愛着が湧いてくるものです。
 スピノザは、世界史の中でも、イスラム・インド史という、いささかマイナーな分野を専攻しています。
 やはりインドという国が好きです。実際に行ったことは、トランジット以外ではありませんが、やはり何となく愛着があります。病気で倒れてさえいなければ、インドを訪れていたはずです。
 イスラム教にも、相当な愛着があります。
 イスラム教徒の原理主義者が、今世界各地で問題を起こしていることは承知しています。でも、やはりイスラム教徒に同情的な自分がいます。
 なのに、このハングル板の、嫌朝鮮民族的な雰囲気はどうしたことでしょう? そもそも、そんなに嫌いならば、見たり読んだり書いたりしなければいいではないですか。


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