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3 日本人=マルキ・ド・サド?

 さて、1992年のスピノザに戻ります。
 朝日の記事で当惑していたスピノザを、今度こそ強烈なショックが襲いました。
 当時のスピノザの情報源は、朝日新聞しかありませんでしたから、多分朝日で見た記事か、投稿から得た知識なのだと思いますけど……。(基本的に、スピノザにはテレビを見る、という習慣がないのです。もちろん、当時ネットなんて普及していませんでした)。
 そのショックを与えたのは、女子挺身隊というのは、12歳からの少女であるということです。
 植村記者の記事が、『女子挺身隊の名で連行された朝鮮人従軍慰安婦……』で始まっていたことを思い出してください。
 そんな、いたいけな少女を、日本軍は強制的に徴発して連行し、売春を行わせていたのだ、ということになります。
 少なくとも、韓国人や朝日が主張しているのは、そういうことでした。(今でも、日韓翻訳ソフトで、「女子挺身隊」と入れると、韓国語では「従軍慰安婦」と変換されるそうです)。

 衝撃でした。

 だって、それでは、幼女誘拐強姦ではありませんか。
 幼女誘拐強姦となれば、ただの大人の売春とは話が違います。そんなこと、戦時であろうがなかろうが、許されざる大罪です。
 中学生の時に読んで衝撃を受けた、マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」を思い出しました。
 まさに、猟奇的な破廉恥犯罪です。
 恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまいました。震えが来ました。同時に、これなら、韓国人が激怒するのも無理はない、と思い、日本人として深く反省しました。いたたまれなくて顔を上げられませんでした。
 そんな状態が、約十年間続いたわけです。ただ、高校生に教えるべき話題ではない、と思い、授業では深く扱わなかったことだけが救いです。
 ですから、ハングル板で、いわゆる〈従軍慰安婦〉なるものは、朝日のでっち上げ≠ナある、という主張を読んだときは、とても混乱しました。
 その、朝日の捏造に、とにかく反日の種ならなんでもござれの韓国人が乗っただけの話である、というのが、ハングル板の住人の主張でした。
 しかも、慰安婦の大多数は、日本人女性だったというのです。別に、植民地人を無理矢理慰安婦にしたのではないのだそうです。
 前述のように、スピノザは、生徒に嘘を教えていたんだろうか。そう自問自答しました。
 そのように混乱しているときに、小泉訪朝があった訳です。
 嵐のような北朝鮮情報の氾濫に、スピノザはますます混乱しました。
 訳が分からなくなったスピノザは、たびたび本屋に足を運び、本を買いあさっては読みまくりました。ネットを徘徊しました。そして、一冊の本を手に取りました。
「海峡は越えられるか」(中公文庫)
 金両基という在日韓国人と、櫻井よしこさんの対談でした。何かとわだかまりのある日韓の歴史問題について、お互い一次資料を出し合ってきちんと議論しよう。そういう趣旨の本のようでした。
 これだ!
 まさに、スピノザが探していたのはこれだと思い、早速買い求めて読んでみたのです。


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