home > 第二章 > ４　海峡は越えられない

４　海峡は越えられない

　金両基というのは、在日コリアンとしては初めて日本の公立大学（静岡県立大学）の教授になった、というのがご自慢の人物です。１９３３年、東京生まれというのですから、お年の割には、多分在日二世なのでしょう。
　櫻井よしこさんは、ベトナム生まれの日本人だそうです。女性ですから、生年は書きません。ニュースキャスターから、フリーのジャーナリストに転身されたそうです。現在は、保守の論客として知られていますが、この本ではまだお若いので、ずいぶんと大人しい印象です。
　この本のあとがきに、金両基氏は、次のように書いています。

――櫻井さんの元従軍慰安婦の「強制連行はなかった」とか、日本のアジア進出の原因を「ロシア脅威論」に求める見解には、わたしは論拠を示せと迫った。証言者の証言の重さを忘れてはいないか（中略）わたしたちは妥協の二文字を忘れて論争を続けたが、いがみ合ったり、罵声が飛び交うことはついぞなかった。それはかぎりなく一次資料を出し合って、事実を確認し、それに基づいて議論を展開しようという共通願望があったからである（後略）。――

　スピノザは、おお！　と思いました。
　ロシア脅威論はともかく、いわゆる従軍慰安婦の強制連行については、それがあったとする��一次資料�≠�見たことが無かったからです。
　これは期待できる。そう思いました。
　早速ページをめくると、最初の発言者は、櫻井さんでした。同書、ｐ１８です。

――まず、第一部が、慰安婦問題です。この問題について最大の疑問のひとつは、慰安婦は日本軍または政府によって強制連行された、という人も、そうではないと主張する人も、軍による強制連行を示す資料が現在のところ出ていないという点では一致しています（後略）。――

　ん？　なんか変だぞ？
　おかしいですね。
��強制連行を示す資料が現在のところ出ていない�≠ﾁて、どういうことでしょう？　
　犯罪は、それを告発する側に、挙証責任があります。きちんと立証された��証拠�≠ｪあって、初めて犯罪は成立します。こんなことは、当然のことです。
　何年の何月某日、スピノザの妻が某氏によって強姦された、と告発するなら、告発する側が、その証拠を明示しなければなりません。当たり前のことです。コリアンたちは、証拠もないのに、従軍慰安婦の強制連行などと騒いでいたということでしょうか？
　朝日新聞が言う、国が慰安所を設置することに関わっていた、などということは、些細なことです。

　なにせ、当時、売春は��合法�≠ｾったのですから。

　櫻井さんは言います。ｐ１９ですが、当時、宮澤喜一首相（当時）の韓国訪問が予定されていたのだそうです。
　その韓国訪問の六日前を狙って、朝日新聞が前述の一大キャンペーンを行ったのですね。
　これを放っておけば、一大外交問題に発展しかねません。そんなことになったら、首相の訪韓、日韓会談は台無しになってしまいます。
　それで、��政治的判断�≠ｩら、加藤紘一官房長官（当時）が謝罪を表明したのだというのです。
　つまり、ここで謝っておけば、韓国世論をおさえられると思い、また韓国政府もそう約束したのだそうです。
　こ、これは、なんでしょう？
　スピノザが知りたいのは、��幼女誘拐強姦�≠ﾆいう、恐るべき破廉恥犯罪に旧日本軍が��組織�≠ﾆして関わっていたのかどうか、という一点です。
　まあ、大人でも強制連行されたのなら、同情はしますが。その強制連行の証拠さえないというのでは、話になりません。
　加藤官房長官（当時）の談話として、石原信雄元官房副長官（当時）は証言します。ｐ２０〜２１です。
「慰安所の設置や監督、経営などについて、日本政府が関与していたことは確かである。しかし、募集を含めて日本軍が強制連行したという資料は確認��できなかった�＝B今後も資料を探し続ける」
　これはどういうことでしょう？
　幼女誘拐強姦どころか、強制連行でさえ、裏付ける資料はなかったのです。
　唖然としました。
　ご存知の通り、日本は書類社会です。特に、軍隊は、その極みです。
　だって、命令もないところで兵士が勝手に発砲したりしたら、危ないじゃないですか。
　ですから、軍が��組織�≠ﾆして行う行動なら、どんな些細なことでもきちんと命令書が残っているはずです。
　もちろん、個人や、分隊規模で行う略奪や強姦は別です。でも、それは、既にＢ・Ｃ級戦犯として裁かれているはずです。
　中には、��慰安婦�≠ﾌ存在そのものが犯罪だから、慌てて書類を焼いたのだ、などという噴飯ものの主張がありますが、そんな馬鹿な話はあり得ません。

　繰り返しますが、当時、売春は合法でした。

　強姦、略奪は、ハーグ陸戦条約で禁じられた犯罪ですが、売春婦を連れてくることに、罪悪意識などあるはずがありません。罪悪意識がないのに、書類を焼くなどという発想そのものが、脳裏に浮かぶはずがないのです。
��強制連行�≠�命じた書類が残っていない限り、強制連行はなかったのです。
　ましてや、韓国人の主張では数十万人の、いわゆる��従軍慰安婦�≠ｪ強制連行されたことになっています。それなら、少なくとも数万枚の命令書が残っていなければおかしい。
　数万枚の命令書を、一枚の漏れもなく焼き尽くすなど、しかも戦後の混乱期にそんなことを実行するなど、いかに悪辣・有能な��日帝�≠ﾅも不可能なことです。

次へ