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11 朝鮮朱子学と上下関係

 でも、これは金両基個人の問題じゃないんですね。朝鮮民族全体の問題なんです。
 李氏朝鮮が、国学としたのは、儒教、なかんずく朱子学でした。
 朱子学は、名分論を重んじます。
 日本では、尊王攘夷の頃などに盛んに議論されました。
 朱子学を国学にした代わりに、仏教は弾圧されます。で、僧侶は身分秩序の最下層、白丁・奴婢などの賤民と同列になります。
 ですから、韓国に観光に行くと、あっちこっちに焼かれた寺があって、ガイドが「秀吉に焼かれた」と説明するそうですが、それは全くの嘘なんですね。仏教弾圧の時に焼かれて、そのままになっているんです。
 名分論というのは、上下の別を峻別します。
 国に適用すれば、中国が中華で、四方の国々は、東夷・西戎・南蛮・北狄という具合に、全部野蛮人の国になります。
 しかし、朝鮮は中国に一番近い、そして最も漢化されている、ということで威張ります。そして大中華であった明が滅ぶと、小中華を自認します。この小中華たる朝鮮から見れば、日本人などは蛮族でまともな文明人ではないんですね。
 人に適用すれば、完璧な男尊女卑社会となります。そして、身分の別は絶対です。職業に、貴賤はあります。王を除けば、読書をする文班である両班が一番偉く、両班でも武班は一段低く見られます。もちろん、最下位には、賤民=奴隷である白丁、奴婢などがいる。同じ身分なら、年齢の上下は絶対です。
(「朝鮮儒教の特質と現代韓国」邊英浩著クレイン。p21)
 ですから、大学教授である金両基は、ジャーナリストである櫻井さんを卑しめるわけです。
 で、身分が上の者は、威張るのが当たり前。
「実るほど、頭を垂れる稲穂かな」
 なんて感覚は一切通用しません。
 国境なき医師団として北朝鮮に入ったドイツ人に、フォラツェン医師という方がいます。
 彼は、金正日が、幼い女の子が歓迎の花束を手渡した際にそれをポイと投げ捨てた、と怒っていました。
 でも、朝鮮民族としては、フォラツェン医師が何を怒っているのか分からないでしょう。
 なにせ、金正日は、北朝鮮で一番偉いのですから。偉い人間は、〈理の空間〉では、偉い人間らしく威張っているのがいいのです。
 たかが、女の餓鬼風情が持ってきた花束など、一番偉い金正日は、投げ捨てるのが朝鮮儒教的に正しい〈理の空間〉における態度なのです。

――上位者が下位者に横柄な態度をとるのも、儒教社会では立派な礼儀=秩序なのである。――
(「韓国は一個の哲学である」小倉紀蔵著・講談社p39)

 しかし、スピノザはフォラツェン医師に同意します。

 朝鮮朱子学なんぞ、糞食らえ!

 と言いたいです。
 さて、この後金両基は、恫喝、論点のすり替え、詭弁を弄し、一度として読むに値する一次資料を提示しませんでした。
 一切です。
 まさに、唾棄すべき精神です。
 それどころか、金両基は、こんな噴飯ものの、物言いもします。櫻井さんが、戦争という異常状態の中で、強姦などを防ぐという意味で、慰安所を設置しなかったら、治安の維持は困難だったろう。と言ったのに対しての、金両基の発言です。p46です。
「しかし、旧日本軍による慰安所設置や元従軍慰安婦のようなひどい例は例は他にないでしょう」
 それに対する、櫻井さんの言葉。
「これは、ドイツもアメリカも、そのほかの国々も同じようなことをしています(後略)」
 瞬殺ですね。
 で、これに対して、金両基はまともに答えず、
「戦争というものをきちんと整理……」
 などという、意味不明の論点そらしをします。これを読んだとき、スピノザは呆れ果てて二の句が継げませんでした。
 つまり、金両基は、と言うよりコリアン全体は、他の国や、自らの国に慰安婦制度があったかなかったか、などという基本的な事実さえ検証せずに、ただ感情の赴くままに日本を非難、中傷していたというわけです。
 この本を読み終わって、スピノザの絶望は深まりました。スピノザは、長年にわたって生徒に嘘≠教え続けてきたのです。
 それでも、なお未練がましく、しばらくの間はしつこく文献を読みあさりました。2ちゃんねるを初めとする、ネットも徘徊しました。数ヶ月だったと思います。
 そして、ついに年貢を納めて確信したのです。

 自分は、嘘つきだった、と。


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