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13 スペイン人という白い神

 ご存知のように、コロンブスの西インド諸島到着以来、続々とスペイン人が新大陸≠゚がけて押し寄せました。彼らは、最初は、原住民インディオに大歓迎されます。
 特に、アステカ帝国に向かったコルテスは、伝説の白い神<Pツァルコアトルの化身と勘違いされ、熱烈に歓迎されます。インディオたちは、白い神たちの素性など、全く知りませんでした。
 スペイン人たちの手によって、西インド諸島にあったいくつものインディオの小国は、あっという間に壊滅的な打撃を受けます。
 そして、白い神≠スるスペイン人コルテスによって、まずアステカ帝国が、次いで、やはりスペイン人のピサロの手でインカ帝国が滅ぼされます。
 スペイン、ポルトガルを中心とするキリスト教徒ヨーロッパ人たちは、アメリカ大陸の先住民、インディオたちに対して、それはもう過酷な殺戮・支配を行いました。

 まさに、暴虐の限りを尽くしたのです。

 土台、キリスト教神学者たちは、肌の色が違うインディオたちが、キリストに救われるべき魂を持った、同じ人類であるかどうかを疑っていました。
 神父ラス・カサスがその著書「インディアス(スピノザ注・スペイン人が発見・征服・植民した地域の総称)の破壊についての簡潔な報告」(岩波書店)で疑義を呈するまでは。
 その後キリスト教の神学者たちは、インディオが、救済されるべき魂を持った人間か、それとも魂を持たないただの動物に過ぎないのか、に関して、真剣な、しかし滑稽な論争を繰り広げました。
 ですが、ラス・カサスの努力、奮戦にも拘わらず、一般の入植者たちはインディオを魂のない動物と見なし、奴隷以下の扱いをし、虐殺を繰り広げることを止めませんでした。
 こうして、西インド諸島の数々の小国や、インカ帝国、アステカ帝国はスペイン人の植民地政策による虐殺、及びヨーロッパからの疫病により、殲滅、と言っていいほどに人口が激減します。
 例えばインカ帝国の人口は、最盛期には1600万人程度いたと推定されますが、それが100年ほどでわずか108万人にまで減ってしまいます。
 また、アステカ帝国の領域においても、征服前の先住民の人口は少なく見積もって、およそ1100万人であったと推測されます。それが、1600年の人口調査では100万人程度にまで落ち込んでしまうのです。
 コロンブスの西インド諸島到着が一四九二年ですから、わずか百年あまりで、これだけの惨劇を生んだわけです。
 ものすごい数字です。
 これは、インカ帝国、アステカ帝国という強大な国家に所属していたインディオたちだけの推計です。
 これらの帝国に所属していない、西インド諸島や、密林に住むインディオたちを数えれば、虐殺されたインディオの数は、もっと膨れあがるだろうと思われます。
 ラス・カサスは言います。
(「インディアスの破壊についての簡潔な報告」ラス・カサス著・岩波書店p26〜27)

――ふつう、彼らはインディオたちの領主(セニョール)や貴族を次のような手口で殺した。
 地中に打ち込んだ四本の棒の上に細長い棒で作った鉄灸のようなものをのせ、それに彼らを縛りつけ、その下でとろ火を焚いた。すると領主たちはその残虐な拷問に耐えかねて悲鳴をあげ、絶望し、じわじわと殺された。
 一度、私は頭株の人たちや領主(セニョール)が四、五人そうして火あぶりにされているのを目撃した(また、ほかにも同じような仕掛けが二、三組あり、そこでもインディオたちが火あぶりにされていたのを記憶している)
 彼らは非常に大きな悲鳴をあげ、司令官(カピタン)を悩ませた。(中略)邪悪な警吏は(即死させる)絞首刑をよしとせず、大声を立てさせないように、彼らの口へ棒をねじ込み、火をつけた。結局インディオたちは、警吏の望みどおり、じわじわと焼き殺されてしまったのである。――(改行、柱はスピノザ)

 さらに、ラス・カサスは言い募ります。(同書p41〜42)

――(前略)このカシーケ(首長)はキリスト教徒たちのことをよく知っていたので、彼らがキューバ島に上陸してからも逃げつづけ、時たま彼らに出くわすことがあっても、いつもうまく身を守っていた。
 しかし、とうとう、彼はつかまってしまい、生きたまま火あぶりにされた。(中略)
 その場に居合わせたフランシスコ会の聖職者は木に縛りつけられたそのカシーケに神と我らの信仰に関する事柄を説いた(カシーケはそれまでに一度もそのような話を耳にしたことがなかった)。(中略)
 彼(聖職者)はカシーケに、もし言ったことを信じるなら、栄光と永遠の安らぎのある天国に召され、そうでなければ地獄に落ちて果てしない責め苦を味わうことになると語った。
 カシーケはしばらく考えてから、キリスト教徒たちも天国へ行くのかと尋ねた。彼はうなずいた。正しい人はすべて天国へ召されるのだと答えた。
 すると、そのカシーケは言下に言い放った。
 キリスト教徒たちには二度と会いたくはない。そのような残酷な人たちの顔も見たくない。いっそ天国より地獄へ行った方がましである、と。インディアスへ渡ったキリスト教徒たちが神と我らの信仰のために手に入れた名声と名誉とは、実にこのようなものなのである。――(改行はスピノザ)

 いやはや、何度読んでも凄まじい。
 なんぼなんでも、日帝の支配がこれより酷かったとは、とても思えませんね。
 でも、西大門の蝋人形の展示などを写真で見ますと、どうやら韓国人は、本気で日帝がこれより酷いことをしたと思っている節があります。

 無知であるということは、怖いことです。


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