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17 みんな仲良く貧しくなって

 こんな次第ですから、朴慶植の言う、
「朝鮮農民は(日帝のせいで)地主対小作人の半封建的な関係にしばられると共に高率の小作料、地税などの半封建的、植民地的な二重、三重の収奪の下に呻吟するようになった」
 などというのは、まったくの出鱈目です。
 むしろ、朝鮮農民は、両班の無際限な搾取から解放されたと言ってもいいのです。
 今の北朝鮮を思い出してください。小田実によれば、
「彼ら(北朝鮮人)の暮らしにはあの悪魔のごとき税金というものが全くない」(「私と朝鮮」筑摩書房)。
 だそうです。一昔前は、本当に真顔でこんなことを言う人間がたくさんいたのです。
 でも、その税金がない代わりに、北朝鮮では野放図な搾取が行われていますよね。李朝時代の両班対賤民と全く同じ構図です。
 北朝鮮というのは、正しく李氏朝鮮の正統な後継者なのです。
 そんな訳ですから、李朝時代の賤民にしてみると、最低限自分が食べられる以上働くのは、損になります。
 だって、余ったものは、両班の気まぐれでいつ取っていかれるか分からないのですから。
 みなさんも、北朝鮮の市場を隠し撮りした映像をご覧になったことがあるかと思います。
 何とか生活の糧を稼ごうと頑張っているアジュンマ(小母さん)たちの側で、所在なげに、何をするでもなく煙草を吸ってブラブラしている大の男たちに気付かれたでしょうか?
 李氏朝鮮の賤民たちは、ちょうどあの北朝鮮の男たちのように、ブラブラと怠けていたのです。
 死なない程度に。
 搾取される側に物がないのですから、搾取する両班の方も、搾取のしようがありませんね。
 それで、李氏朝鮮は、今の北朝鮮のように、みんな仲良くお手々繋いで貧しくなっていったのです。
 また、李氏朝鮮では、朝鮮朱子学の影響で、実学が極端に軽んじられていました。ほんの時折、やはり実学は大切だ、と訴える実学者が現れるのですが、朱子学者たちによってみんな潰されました。
 前にも書きましたが、その傾向は今でも続いていて、韓国では技術者は、官僚や教師、事務員などより軽んじられているそうです。
 そのため、韓国では深刻な理系離れが起きています。
 日本でもその傾向はありますが、それよりよっぽど酷い。みんな経済学部などに進んで、両班たる社長を目指すんですね。


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