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25 いよいよ出たぞ。強制連行

 さてと、気を取り直して、朴慶植に戻りましょう。土地や米の収奪については、もういいと思いますので、本題の「強制連行」に移ります。
 で、二章p48の(1)「強制連行政策」で朴慶植は、スピノザが先に説明しました、国民徴用令は朝鮮には昭和19年まで施行されず、徴用できた期間は7ヶ月であり、徴用された者は僅かであった、という説を、
「全く歴史的事実に相反する内容である」
 と否定します。
 そして、次のような主張をします。

――37年9月日本石炭連合会は産業の戦時体制に沿うべく労働力補充陳情書を商工大臣宛に提出して、石炭鉱業を軍需工場と同様に遇せられたいとしている。すなわち「石炭鉱業は工場に比し労務募集上常に不利な立場に置かれているので、(中略)内地在住朝鮮人労働者にして就業状態思わしからざる者(失業登録者を含む)ある地方においてはこの際これらの者を極力石炭山に紹介すること」として朝鮮人労働力の動員方針を明らかにした。――(同書p49)

 え! っと。
 これ、何が言いたいんでしょう?
 要するに、失業者に石炭鉱山での仕事を紹介した、という話ですよね。
 何がいけないんでしょう? 
 まあ、確かに、鉱山の労働は大変でしょうけど、失業よりはいいでしょう。
 まして、兵隊として最前線に送られるのに比べればねえ。
 鉱山で仕事をするのは嫌だなんて、やはり我が儘としか思えません。しかも、鉱山は賃金高いし。
 で、朴慶植、こんなことも書いています。p50です。

――(前略)「国家総動員法」(1938年4月)がたてられた。(中略)1939年1月国民職業能力申告令が実施されるとともに7月4日閣議決定による「国民徴用令」が発表され大々的な動員がはじまった。しかし朝鮮にたいしては「徴用令」そのままの形での適用をさけ「募集」形式での動員計画がたてられて実施された。(中略)新方針の中に「労働力の補給策として半島人労務者並に婦女子の利用」を明らかにした。
(中略)その結果1925年以来の「朝鮮人労働者移入制限方針」が解消されて、特に労働力の不足を告げていた炭坑、鉱山および土建業に集団的連行が強行されることになった。――

 はて?
 これも、意味不明ですね。
 第一、
「朝鮮人労働者移入制限」
 があったって、自分で書いているじゃないですか。それだけ、強制されなくても、日本に来たかった朝鮮人はいっぱいいたということですね。
 こういう風に、自分の論旨と食い違うことを書いて、平気の平左でいるところが、スピノザが頭の悪い*{だと思うゆえんです。
 でもまあ、こんな本に長い間騙され続けてきた、日本の左翼もなんだかなあ、と思ってしまいます。
 しかも、徴用はされずに(内地の日本人はされていたのに)募集≠ナすんでいることまで書いてあります。
 おまけにおまけに、も一つおまけに、婦女子≠ニ同様の扱いをされているんですよ。
 どんだけ優遇して欲しいんですか。
「集団的連行」が強行って、「連行」言いたいだけちゃうんか、と。
 さて、いよいよ話も押し詰まって参りました。ついに、本題に突入します。p70です。

――「もつともひどいのは労務の徴用である。戦争が次第に苛烈になるにしたがつて、朝鮮にも志願兵制度が敷かれる一方、労務徴用者の割り当てが相当厳しくなつて来た。納得の上で応募させていたのでは、その予定数に仲々達しない。
 そこで郡とか面(村)とかの労務係が深夜や早暁、突如男手のある家の寝込みを襲ひ、或ひは田畑で働いている最中に、トラックを廻して何げなくそれに乗せ、かくてそれらで集団を編成して北海道や九州の炭鉱へ送り込み、その責を果たすといふ乱暴なことをした。――

 おお!
 とうとう出ましたね。寝込みを襲い、あるいはトラックに乗せて集団で強制連行する場面ですね。
 スピノザにも、こういう話を授業で教えていた、暗い過去があります。
 では、(写真9)を見てください。

(写真9)

「朝鮮新話」 鎌田沢一郎 昭和25年 創元社 p320です。

――もつともひどいのは労務の徴用である。戦争が次第に苛烈になるにしたがつて、朝鮮にも志願兵制度が敷かれる一方、労務徴用者の割り当てが相当厳しくなつて来た。納得の上で応募させていたのでは、その予定数に仲々達しない。
 そこで郡とか面(村)とかの労務係が深夜や早暁、突如男手のある家の寝込みを襲ひ、或ひは田畑で働いている最中に、トラックを廻して何げなくそれに乗せ、かくてそれらで集団を編成して北海道や九州の炭鉱へ送り込み、その責を果たすといふ乱暴なことをした。但(ただ)総督がそれまで強行せよと命じたわけではないが、上司の鼻息を窺ふ朝鮮出身の末端の官吏や公吏がやつてのけたのである。――

 あれ?
 おかしいですね。そっくりの文なのに、一ヶ所違うところがあります。
 そうです。
「但(ただ)総督がそれまで強行せよと命じたわけではないが、上司の鼻息を窺ふ朝鮮出身≠フ末端の官吏や公吏がやつてのけたのである」
 この部分が抜けているのですね。
 姑息な印象操作です。
 実は、スピノザ、この「朝鮮新話」の実物を是非見たいと思って、アマゾンで検索してみたんですね。すると、あるにはありましたが、15000円もするんですね。ちょっと、手が出ない。
 図書館でも、近くの図書館で所蔵しているところがありません。
 でも、まあ写真があるからいいか、と。ケンチャナヨ。
 しかも、朴慶植君、決定的な一文を書いています。
「納得の上で応募させていたのでは、その予定数に仲々達しない」
 あれ? やっぱりおかしいですね。
「納得して」応募していたんですか?
 それの、どこが強制連行≠ネんでしょう。(苦笑)
 やっぱり、朴慶植君、頭が悪い。嘘も満足につけない。


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