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8 壇君神話=亜熊との出会い

 でp10には、こういう愉快な記述があります。

――神の息子であった桓雄(ファヌン)と、熊が変身して人間となった熊女(ウンニョ)の間に生まれた壇君王倹はこの土地に最初の国家である古朝鮮をたてた。――

 出た! 出ましたね。
 これが、コリア・ウォッチャーの間では名高い、壇君神話です。
 桓雄の父である神、桓因(ファニン)は、帝釈天の別名だそうです。
 おっと、いきなりインドの帝釈天が出てきました。
 帝釈天というのは、原型はバラモン教の神様、インドラのことです。
 バラモン教の聖典、ヴェーダでは、主神の一柱です。
 そのインドラが、仏教に取り込まれ、仏教の守護神となったのが帝釈天なのです。
 帝釈天は、梵天(ブラフマー)とともに仏教を守護し、十二神将の首位として東方を守ります。
 ちなみに、帝釈天の名はインドラのサンスクリット名のSakra devanam indraのうち、(サンスクリット語のフォントが入っていないので、本当の表記とは、少し違います)Sakraを釈と音訳したものに、deva(神)を天と意訳して後部に付け足し、indraを帝と意訳して冠したものです。
 葛飾柴又の、両さんでお馴染みの帝釈天は、この神様を祀っています。
 本来、インドラはアーリア民族共通の神です。
 ですから、紀元前14世紀のヒッタイト文書にも出てくる、由緒正しい神様なのです。
 で、帝釈天は、別名を、釋提桓因(しゃく だいかんいん)とも言います。
 先ほどのSakra-devanam indraのIndraが、訛って因陀羅と変化し、釋迦提桓因陀羅と称さるんですね。提桓にあたる、devanamが、サンスクリット語で、神という意味になります。
 それが、あちこち略されて、釋提桓因となった。
 中国仏教では、提桓因で、天主という意味にしているようです。
 おそらく、壇君神話の作者は、元の意味を知らずに、提桓因の後ろ二字だけを取って、桓因という名前にしたのでしょうね。
 この辺がケンチャナヨ精神爆発です。
 で、この桓因の庶子が桓雄ということになっています。
 なぜ、庶子なのかは、謎です。
 檀君神話の原文でも、何の説明もなく庶子と書いてあります。儒教世界では、嫡子と庶子はそれこそ天と地ほども違います。なのに、どうして庶子なのでしょう?
 分かりませんね。


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