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14 「大百済帝国」事件

 ううむ、「三国遺事」の壇君神話だけでも、日本人には頭痛いのに、その上それよりも古い事蹟の書かれた「桓檀古記」とは。
 で、ベテランの2ちゃんねらーでさえ、次のような次第になってしまいます。

――あれは2002年のこと……ボクがまだそんなに韓国のことを知らずに、なんとなく日韓翻訳掲示板に関わり始めた頃の事……韓国人が掲示した大百済帝国の文を初めて見て、引っくり返った記憶がある。
 今となっては微笑ましい思い出の一つである。(笑)――
(kimuraお兄さんという方の「木村幽囚記」というブログからです)。

 日韓翻訳掲示板というのは、前に出てきたNAVERが運営していたEnjoy Koreaという掲示板ですね。
 で、このkimuraお兄さんのブログに出てくる、大百済帝国の地図というのがこれ。(地図2)

(地図2)


 これを見て、さすがの強者kimuraお兄さんも、引っくり返ってしまったんですね。(kimuraお兄さんというのは、Enjoy Koreaの有力な論客の一人でした)
 このkimuraお兄さんの記事に付いたコメントが以下です。

――ありましたねえ……大百済帝国事件。
 丁寧な口調の韓国人が地図を持ち出してきて大真面目に解説し始めたので、日本人側がお祭りになりましたね。
 こんな驚きはそうないだろうと思ってたら、その後も驚かされっぱなしなんだから、侮れない国です。――

 という次第ですから、さすがに百戦錬磨と思えた、2ちゃんねらー、中でも極悪非道なEnjoy Koreaのメンバーも、2002年頃は、韓国の斜め上に耐性がなかったことが分かります。
 ところが、話はこれで終わりません。
(地図3)を見てください。

(地図3)

 うーむ、こ、これは凄い。
 シュメール文明も、エジプト文明も、インダス文明も、黄河文明も、みんな朝鮮民族が発祥なんですね。
 それどころか、アメリカのインディアンもインディオも、起源をたどれば朝鮮民族と。
 さ、さすがに、韓国人も、これを信じているとは思えないけど……。いや、しかし……。
 こういう偽史が出てきた背景には、やはり日本による韓国の併合があるようです。
 それで、自尊心を傷つけられたコリアンは、魯迅の「阿Q正伝」における阿Qなみの精神的勝利法を勝ち取ろうとするわけです。

――このように、これらの(「桓檀古記」などの)「歴史書」が今世紀(二十世紀)に入って書かれた偽書であることはまず疑いない。したがって既存の学会ではまったく無視されているが、民間学者や一般の人々の間では未だに注目を集め、「研究」の対象となっているのだ。ソウルなど大都市の大型書店に行けば、これらの書に関する本や、これらをもとにして書かれた「誇大史」が大量に並べられているのを見ることができる。――( )はスピノザ。
(野平俊水著「韓日戦勃発!?」文藝春秋。p148)

 さっきkimuraお兄さんが引っくり返った大百済帝国、というやつも、こうした民間の在野学者が提唱しているものなのです。
 ところが、侮れないのが、高等学校と中学校の教科書の地図に、こっそりと大百済帝国の版図を、古朝鮮の版図として載せているんですね。本文には説明がありませんから、姑息な印象操作です。(もちろん、日本の部分は除かれていますが)。高校はp43。中学はp33です。なぜか、小学校はまあ、まともな地図です。
 しかも、日本と違って凄いのは、この在野学者たちが、自分たちの研究=A中でも「桓檀古記」の内容を、正式な歴史教科書に載せるように要求しているということですね。
 おまけに、韓国のテレビ局まで、それに沿った内容の番組を放映してしまう。
 つまり、そういう「桓檀古記」を教科書に正式に載せろ、という勢力は、なかなかに強大なものなのです。
 この大百済帝国、に関しては、あの「親日派の弁明」を書いたキム・ワンソプ氏ですら、信じているという話ですから、韓国史学会の闇は深いものがあります。
(西尾幹二氏と行った「日韓大討論」・扶桑社、で、大百済帝国について滔々と語るので、西尾幹二氏が目を白黒させていました)。
 ところで、まさか「桓檀古記」の和訳はないだろうな、と思ってアマゾンで検索して、それこそ引っ繰り返りました。
 あるんですね。
 和訳。
 まったく、日本人というやつは、何でも翻訳したがる。
 さらに調べて、今度こそ、ほんとの本当に驚きました。
 この「桓檀古記」を翻訳したのは、鹿島昇という人ですが、実は、今の韓国人は、この鹿島昇が日本語に訳した「桓檀古記」から、
ハングルに訳した
 本を読んでいるんですね。
 考えてみれば、「桓檀古記」の原文は、もちろん漢文ですから、今の韓国の在野史学者は読めないわけです。
 なんじゃこりゃ。
 こんなとんでも史観でさえ、日本発祥かよ。と呆れ返りました。


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