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5 扇子はやっぱり日本製

 さて、ここまで書いて、遅い夕食を食べながら、久しぶり、恐らく数年ぶりにミュージックステーションを見ました。妻の気まぐれです。
 ちょうど、シャイニーとかいうKポップグループが初出演するところでした。これ幸いと聴いてみました。
 やっぱり、リズムセクションは、単純でした。ドラムは、ただ裏打ちを繰り返すだけで、何の芸も見せません。ベースが聞こえないのも同様です。だから音が不安定で、薄っぺらに聞こえます。
 歌は……。
 ごめんなさい。バックバンドに気を取られていて、全く印象に残っていません。
 少なくとも、スピノザも二〜三回聴いたことのある、AKB48を、学芸会扱いできるようなプロフェッショナルな魅力は全く感じませんでした。
 むしろ、この作業で、AKB48の株が少し上がりました。AKB48の作曲、編曲者共に、腕がいい。
 サビが個性的で、ちゃんと耳に残っています。
 その後に、ユニコーンというバンドが出てきました。日本人です。
 むさいおっさんが、五人並びます。学生服に学帽という出で立ちです。十数人の、体操服姿の子供もいます。
 さて、演奏が始まりました。「レディオ体操」という曲で、その曲に合わせて子供達が体操をします。見ていても面白いのですが、やはり曲に注目してみました。
 ベースがきっちり仕事をしています。パーカッションも、裏打ちだけではなく、要所要所で小技を効かせ、演奏効果を高めています。ボーカルも、声に力があって、なかなか聴かせます。
 昔有名だったバンドが、再結成したものなのだそうですが、まあ、音楽的にはシャイニーとは比べものになりません。圧勝です。
 それに、これはスピノザなりの解釈ですが、ポップスというものの源流は、ブラックミュージック、要するにジャズとか、ゴスペルソングなどにあると思うのです。
 そして、そこにビートルズを嚆矢とする西欧のロックが合流する。
 でも、西欧のロックのリズム感も、決してクラシックのそれではありません。もちろん、西欧のロックの源流も、ブラックミュージックにあるわけですから、ブラックミュージックのリズム感の、圧倒的な影響下にあります。
 で、こういう音楽を演奏するのに肝心なのが、そのリズムの独特なのり、ジャズでいうスィングする感覚だと思うのです。
 合唱でも、黒人霊歌やミュージカルナンバーなどを歌うとき、指揮するときは、このリズム感に苦労させられます。
 とは言っても、最近の若者たちは、こういうのりがいいですね。一昔前なら、大汗を掻きながら指導しないと出来なかったパッセージが、いとも簡単に軽々と歌えてしまう、やはりCDなど日常に、ブラックミュージックののりを持った音楽が溢れているんですね。
 そして、Kポップの歌い手達には、この独特のブラックなリズム感が微塵も感じられないのです。
 それが、彼らの歌に、特有の田舎臭さを生んでいます。
 そう、むしろ演歌(韓国でいうトロット)ののりですね。


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