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8 声のクリアさについての一考察

 これで、Kポップを聴いたのは八曲ということになりました。
 もちろん、ベースのない音楽というものは存在します。
 クラシックなら、アカペラ(無伴奏)で歌う少年少女合唱団とかが、それに近いでしょうか。大人の女声合唱だと、成熟したアルトがベースに近い役割をしますので、除外しましょう。
 でも、こういう高い音が美しいのは、音色がクリアな場合ですね。
 ニグロスピリチュアルや、ジャズのようにわざと濁った音を使う時もありますが、それは、やはり特殊な場合です。X JAPANのボーカルのトシも、かなり高い声で歌いますが、やはりクリアな透明な声です。
 で、この少女時代とバックバンドが出している音は、キンキンうるさいだけで濁っています。お世辞にも、レベルが高いとは言えません。なんか、下手くそな上に、低音楽器のないブラスバンドを聴かされている気分になります。
 でもさっきのブログ主は、こう言うんですねえ。
「アレンジャーやコンポーザーのセンスは抜群です」と。
 センスねえ……、センス。扇子……。
 いや、それを言われちゃうと、もう話は終わっちゃいますね。
 昔、予備校に通っていたとき、作曲家はマーラー以外認めない。ベートーベンなんて糞! という若者に出会ったことがあります。
 これは、まさしくセンスの問題なので、議論の余地がありません。
 三大作曲家もへったくれもない。
 しょうがないですね。蓼食う虫も好き好きです。
 スピノザは、ポルノ・グラフィティというバンドが、初めてミュージック・ステーションに出てきたときに、こいつらは売れる、と断言したことがあります。
 ご存知のように、ポルノ・グラフィティは、その後快進撃を続けました。
 その後も、スピノザが、こいつは売れる、と言った歌手、グループはたいていブレイクしました。お陰で、子供たちの間でスピノザの株が少しだけ上がりました。
 ところが、ところがですねえ……、ヒッキー、宇多田ヒカルだけは外しました。デビュー曲の「Automatic」が、全く理解できなかったのです。
 宇多田ヒカルが、マイブームになったのは、彼女のサードシングル「 First Love」からです。この切ないラブソングを、初めて聴いたときは衝撃を受けました。
 ええ、その後は、どっぷりと浸かりましたとも。宇多田ヒカルに。現金なもので「Automatic」の良さも段々分かるようになりました。
 その時は、スピノザには最初理解できなかった才能を見出して支持した若者たちの音楽センスに舌を巻き、脱帽したものです。
 本気で、そのセンスに嫉妬、羨望さえ覚えました。
 しかし、どうも今回は違う感じがします。スピノザにセンスがなくて、酒井氏や小野田氏、さっきのブログ主に理解できるKポップの音楽性が理解できなかった、という可能性は、限りなくゼロに近そうです。
 ヒッキーの時のように、スピノザが反省して忸怩たる思いを抱く、ということには、恐らくなりそうもありません。


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