9 亜熊風天孫降臨
ま、そこはさておき、その桓雄が、人間界に興味を持ち、天から地上に降ります。
ちょっと、天孫降臨みたいですね。
この時、桓雄が降り立ったのが白頭山もしくは妙香山。現在の北朝鮮と中共の国境地帯にあります。中国名は長白山です。
ですから、白頭山は韓国人にとっては聖地ですが、中共の支配下にあるため、祭りなども自由には行えません。
桓雄は、人間界を300年治めたことになっていますが、その人間がどこから湧いて出たのかは謎です。
この辺りが、朝鮮の神話の徹底しないところですね。
さて、桓雄が人間界に降りてきたとき、一頭の虎と、一頭の熊とが人間になりたいと訴えます。
そこで、桓雄は、ヨモギ1握り分とニンニク20個を与え、これを食べて100日の間太陽を見なければ人間になれると告げます。
飽きっぽい虎は、途中で投げ出します。
しかし、熊はちゃんと潔斎して、21日目に熊女(ウン ニョ)として人間の女性の姿になります。
なぜ、100日と言われたのに、21日でいいのか?
それも謎です。ケンチャナヨのようです。
熊女は、人間となりますが、配偶者がいなかったので、桓雄が人間の姿となり、熊女と交わって壇君王倹を産みます。
このため、ハングル板では、しばしばコリアンを亜熊≠ニ呼び習わします。
壇君は、中国の聖王、堯(ぎょう)帝の即位50年後に、平壌に遷都し、即位して朝鮮と自らの国を名付けます。
後の李氏朝鮮と区別するために、古朝鮮と言います。
これが、紀元前2333年のことということになっています。コリアンが使う壇君歴は、この年を元年とします。
その後、周の武王が朝鮮の地に箕子を封じたので、壇君は隠れて山の神となります。
亡くなったのは、1908歳のときだそうです。
と、まあ、以上長々と説明してきたのが、壇君神話です。
ちょっと待て!
それは、ただの神話だろう。
とお思いですか。
では、次の一行をどうぞ。例の教科書の、p10です。
――トンウクは、わが国の歴史が深く、最初の国家である古朝鮮をたてた壇君王倹が神の孫であるという事実を、大変誇らしく感じた。――
いかがですか。
「壇君王倹が、神の孫であるという事実=v
と書いてありますね。
韓国人、いや、コリアンにとって、壇君も、古朝鮮も、神話ではなく史実なのです。
金大中元大統領が、2002年ワールドカップの開会式で、誇らしげに、
「半万年の歴史を持つ我が大韓民国」
と言ったことを憶えておいでの方もいらっしゃるでしょう。
この半万年というのは、壇君歴を元にしたものなのです。
え? でも、紀元前2333年に即位したんなら、まだ4500年も経っていないだろう? アバウトすぎない?
と思われているとしたら、それはコリアンを知らなすぎというものです。
コリアンにとって、たかが数百年の違いぐらいは誤差、ケンチャナヨなのです。
それにしても、いくらケンチャナヨとは言え、紀元前2333年に即位した壇君のお祖父さんが、紀元前5世紀以降に成立した仏教の神様ではねえ。
平仄が合わないにも、ほどがあります。